新しい中世

2009年6月26日 読書
田中明彦先生の1996年(平成8年)初版の本です。
ちょっと古いですが、長いこと積んであったので機を見て読んでみました。
圧倒的な文献を積み上げた上で論理的にアリの子一匹でられないようにして
結論へと導いていく流れがとても心地よく頭の良い方の文章だと感じさせられました。

冷戦前のWW2後のアメリカ一極支配から描きはじめて徐々に現代へと近付いていきます。
アメリカ一極支配が徐々に崩れ、多極化してゆく中で多国間枠組みが形成され
民主主義国が自由貿易圏内で利益を追求し貿易を行っていくことで相互依存を深めてゆく図を描き、
戦争による相互依存破壊による利益逸失>戦勝による利益
となることと主権者である人民が自らを戦争に送り込む選択をしないであろう事により民主主義国家間での戦争がほぼ起こりえないと結論づけます。

次に、国家自体が今後企業等に比べ相対的に脆弱化してゆくと予想します。
#今回の不況で大きく針は国家側に戻りましたがトレンド的には上記の通りだと思います。

また、世界が大きく三つ(民主主義自由貿易国家圏・覇権主義国家圏・その他辺境国家圏)に分かれそれぞれへの対応が必要だとあります。

第一圏とは今後も相互依存を深めることで生産性が高まります。
第二圏(主として対中国政策)とは勢力均衡政策を採りミリタリーバランス的に現状維持しつつ、民主主義を根付かせるよう努め、相互依存性を深めることで戦争のCPを下げるように努力する。
第三圏にはNGO等を通じできうる努力を行う。

これを読みつつ、内戦がいかに容易に飢饉を発生させ、大量の餓死者を生むかを描いたジャレド・ダイアモンドの「文明崩壊」を読んでいたので理解が早かったです。

戦争をすることで一時的な右翼的満足感を味わえることができますが、一定以上成熟した民主主義国家では利益を生みません。

で、これから何の商品に賭けようかと思いをはせつつ
「中世」って「ちゅうせ」ではなくて「ちゅうせい」って読むのだと気付く31です。

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